次亜塩素酸水による空間除菌に関して
次亜塩素酸水による空間除菌に関する試験と考察
はじめに
新型コロナウイルスの流行により次亜塩素酸水関連の商品がたくさんありますが、多くの商品は、加湿器等で気化した次亜塩素酸水を噴霧することで空間除菌が可能であるとして利用例にて紹介しております。
加湿器などに入れて行う空間除菌を謳うと消費量が大幅に増え、売り上げ増につながると予測されるため、当社でも10年以上前のGreen Zone開発当初から、次亜塩素酸の空間除菌は可能なのか、問題がないかとの疑問が多くありました。
しかし、そもそも厚生労働省やNITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)が、新型コロナウイルスの流行下であっても、次亜塩素酸水の空間除菌に否定的であったため、当社としては確証が持てず、正しい情報を探るため、試験を実施することにしました。
当社では、HIMSインターナショナルメディカル事業部に研究班を作り、約3年間、実際に複数のメーカーの加湿器に様々な次亜塩素酸水を入れて試験を重ね検証しました。
研究班には、特殊な装置で非常に微小な塩素ガスを病棟内に循環させ、院内感染を防止する試験に携わった担当者も加わり、専門的視点を高め、空間を3次元的、時系列的にデータを収集することにしました。
本資料は、当社として一定の結論に達したため、概要及び結論を公開し、多くの方々に参考として頂けるようにとの観点から作成いたしました。
また、最後に広い範囲を除菌しなければならいない方の為に、試験結果とその考察にとどまらず、今回の試験結果から得られた内容が実際の現場に生かせるように注意事項やヒントを加えましたので、ぜひ、参考にしてください。
試験の概要
今回実施した試験の概要は以下になります。
試験に用いる加湿器は、超音波式、気化式の2つの方式の加湿器を使用しそれぞれ別々に実施しました。
加湿器の機器性能による差をなくすため、異なるメーカーの異なる機種を複数使用しました。
フィルター等の汚れが測定値に影響することから、加湿器の交換品や内部部品は可能な限り新品のものを用意し、定期的に交換しました。また、清掃やメンテナンスは毎日実施しました。
当社製品のGreen Zone含む当社にて生産試験中の次亜塩素酸水及び、インターネットで発売されている他社の次亜塩素酸水製品(約20製品/空間除菌を可能としているものに限る)で実施しました。
説明書やWEBサイトに記載のある濃度にて実施、濃度指定がない製品は有効塩素濃度50ppmにて実施しました。
加湿器の設置する位置を窓、ドアを締め切った状態の6畳の部屋の中心、壁際、隅で実施しました。
同じく、窓(掃き出し)を完全に開けた状態の6畳の部屋の中心、壁際、隅で実施しました。
噴霧後15分後、1時間後、3時間後に加湿の吹き出し口から距離1㎝、30㎝、1m、3m、部屋の各隅など複数地で塩素濃度を測定しました。
測定の高さは各距離の測定地点において、それぞれ床から1㎝、50㎝、1mで実施しました。
また、床上に付着した塩素や塩化化合物がないかを可能な範囲で調査しました。
機器の大きさにより吹き出し口の高さや方向に差がありますが、今回の試験では、機器の高さは考慮に入れず、測定場所の高低差試験はすべて床からの高さを基準として統一しました。
調査時間内はいずれも噴霧を継続した状態で実施しました。(噴霧停止後の空間に残存する塩素測定は今回の試験では実施しておりません。)
希釈に用いた水は正確なデータを収集するため、すべて純水を用いました。
試験結果のまとめ
今回、実施した試験結果から得られたことをまとめてみます。
吹き出し口距離1㎝では、空間及び床に比較的高濃度の塩素反応を確認できる製品とほとんどできない製品があり、製品により非常にばらつきがあった。
吹き出し口距離30㎝程度でもほぼ1㎝付近と同じような結果であった。
吹き出し口距離1m以上になると、加湿器の種類、方式、吹き出し方向や風量により、測定結果にかなりばらつき確認されるようになり、多くは吹き出し口距離1㎝の1/4~1/5以下程度になり効果が薄くなった。
15分後も1時間後、3時間後も空間に関する測定結果に大きな差はなかった。
空中の測定結果は床上の測定結果に比例することが多かった。
いずれも床上や高さ1㎝の測定値が最も大きいことが多く、高くなるにつれ効果は薄れた。
超音波式加湿器では吹き出し口付近と距離1m以上の測定値に非常に大きな差がある事がわかった。
小型の超音波機器では真上でも高さ1m付近はかなり効果が薄くなる傾向にあった。
部屋の中心付近よりも隅で強い反応を示す傾向が強かった。
窓(掃き出し)を完全に開けた状態では、風のある時とない時で大きく測定結果が異なり、吹き出し口付近でもまったく反応が出なかったり、部屋の隅で非常に大きく反応があったりと一定しせず、測定結果が大きな範囲で揺れた。
窓を閉め切った部屋でも隣接する部屋の換気扇程度の風が影響し大きく測定結果がぶれてしまう場合があった。
人の移動や動作、物の移動等わずかな影響でも測定結果が一定せずぶれてしまうことが多々あった。
試験結果の考察
試験結果を踏まえて考察してみます。
次亜塩素酸水の加湿器噴霧による空間除菌は、一定の効果があると思われます。
吹き出し口距離30㎝、高さ50㎝程度以内の範囲では次亜塩素酸による除菌が十分可能と思われるが、長時間呼吸すると健康に害を及ぼすと思われるレベルの製品やケースが見受けられた。高濃度になるケースもあるため長時間吸引しないことやペットや植物、魚などを近くに寄せない等多くの注意が必要であると思われます。
吹き出し口距離30㎝以上離れると、加湿器の風量や風向、障害物に有無に左右され始め、吹き溜まりでは高濃度、風上や吹き流れのない場所ではまったくゼロと大きなばらつきがあり一定せず、安定的、均一的に空間除菌を行うことや安全性を確保しながら除菌することは困難であると思われました。
吹き出し口付近の高さに関しては、床に近い場所では高濃度、1mではかなり低下する傾向が強く、こちらも大きなばらつきがあり、安定的、均一的に空間除菌を行うことや安全性を確保しながら除菌することは困難であると思われました。
窓や隙間からの風、換気扇、エアコン、人の移動など、わずかな風の流れで大きく測定結果に影響があり、気体のコントロールの難しさを感じました。
人体への影響に関しては、呼吸する人の背の高さ等によって大きく異なると思われ、1m以上高い位置で呼吸する大人だけがいる空間と、赤ちゃん等の常に呼吸する位置が低い乳幼児がいる空間は、分けて考えるべきであると感じました。
吹き出し口付近や吹き溜まりの床上では塩化化合物の反応が非常に強いため、足をなめる猫などのペットへの影響も否定できないと思われます。
まとめ
これらの結果から、次亜塩素酸水を加湿器に入れて噴霧することによる空間除菌は、限定的な範囲において効果があると思われます。しかしながら、風や部屋の構造、置物、窓、ドア、換気扇、エアコンなどの状況によるわずかな風の流れに大きな影響を受け、吹き出し付近や吹き溜まりでは高濃度、一方で、高さ、距離、風向によってはまったく除菌できない場所も多い傾向から、安全性を確保しつつ、安定的、均一的な空間除菌をすることは困難で、注意点を考慮し、創意工夫しなければならないと思われます。
広い範囲を除菌しなければならない人へ
それでも実際には、短時間で広い範囲を除菌しなければならない方は、たくさんいらっしゃると思います。
感染症患者が出てしまったご家庭や、介護されている方など広範囲を除菌やウイルス対策する必要にせまられている方も多くいらっしゃるでしょう。
また、病院や介護施設など、クラスター対策をしなければならない方も多くいらっしゃると思います。そのような方々の為に、注意事項と工夫点を以下にまとめておきますので、これらをヒントに、本試験の結果と合わせ、次亜塩素酸による空間除菌の特徴を把握し、安全性を保ちつつ広範囲の衛生確保にお役立てください。
注意事項
吹き出し口付近は非常に高濃度になることが懸念されますので、植物、水槽、鳥かご、ペットのケージなど、長時間吹き出し口付近に動植物が存在しない環境にする必要があると思われます。
人間やペットも同様に寝室での就寝や居間でくつろぐなど、長時間、吹き出し口付近に留まる行為は健康への影響が懸念されるため、加湿器の設置場所はこれらの場所を避け、十分考慮しなければならないと思われます。
目や鼻の高さが常に低い子供や赤ちゃん、ペットなどの場合は加湿器の設置場所には特に注意が必要であると思われます。
トイレなどの狭い空間では、噴霧時に人間やペットが立ち入らないようにする必要があると思われます。
お勧めのアイデア
今回の試験では、参考試験としてサーキュレーターを併用した試験を行いました。
時間の関係でデータが収集は限定的でしたが、横だけでなく、縦にも自動で首を振るタイプのサーキュレーターを吹き出し口付近に置き、縦横自在に部屋中に弱い風を送ると、理想的な結果が得られるケースに遭遇しました。
強い風では塩化化合物がたくさん床に発生しますが、これは微細な埃が舞い反応して落下した為と推測できます。
また、サーキュレーターと併用する場合は、加湿器は空気清浄機を兼ねた気化式のものが好結果が得られました。これはサーキュレーターによって舞った埃を空気清浄機が除去しているものと推測できます。サーキュレーターと併用する場合は超音波式ではなくて加湿機能付き空気清浄機をお勧めいたします。
なお、本結果が得られた際の当社製品Green Zoneの濃度は、原液を10倍に薄めて(10倍希釈)で行っております。
当社の宣伝方針に関して
次亜塩素酸の殺菌作用はたいへん有効で魅力的ではあるものの、空間除菌においては、呼吸器系、目等の粘膜への悪影響もあるため、濃度管理、曝露時間の制御が非常に重要であると思われます。
その次亜塩素酸の流れを空間上で均一に保ったり、一定濃度に管理したり、高濃度の箇所を作らない等コントロールするには注意や工夫が必要であり、一般的には困難であるとの理由から、動物や人間、魚、植物に対する悪影響を排除できないと判断し、当社では、空間除菌を推奨する広告や宣伝等を行わないこととしました。
関連情報
空間除菌ではないですが、今回の試験にて加湿器内の成分分析を予備データとして収集しました。加湿器内のタンクや貯水箇所、フィルター等加湿器の機器内部では明らかに除菌効果を示す製品が多かったことから、次亜塩素酸水の適量の注入は加湿器の機器内部の衛生においては非常に効果があることが確認できました。なお、本結果が得られた際の当社製品Green Zoneの濃度は、原液を10倍に薄めて(10倍希釈)で行っております。
本試験に関する留意事項等
数年にわたる弊社の試験でも時間や人員の制約にて限られた範囲で行う必要があるため、試験結果考察における留意事項を以下にまとめておきます。また、本資料を作成するにあたっての留意点等も併せて付記いたします。
スチーム式(加熱式)、ハイブリッド式(加熱気化式)の加湿器では、次亜塩素酸水を加熱することによる品質変化の観点から今回の試験は実施しておりません。
専用の加湿器を使用するよう指示がある商品は、仕様が類似の加湿器を代用したため、必ずしも正確とは限りません。
試験実施の時期、天候、気温、湿度等に関しては、一定の条件にて測定できなかったため試験結果が正確でない可能性もございます。
本試験の結果や資料は、他社製品の空間除菌効果を否定するものではありませんので、ご了承ください。
製品名やメーカー名及び収集したデータに関しては、各メーカー様の名誉を尊重するため、控えさせていただきます。ご了承ください。
2023年3月22日
Diamond Proブランド
高品質次亜塩素酸水
Green Zone
製品開発Team